本文
されば御内の人人には天魔ついて前より此の事を知りて殿の此の法門を供養するをささえんがために今度の大妄語をば造り出だしたりしを御信心深ければ十羅刹たすけ奉らんがために此の病はをこれるか、上は我がかたきとは・をぼさねども一たん・かれらが申す事を用い給いぬるによりて御しよらうの大事になりて・ながしらせ給うか、
現代語訳
それゆえ江間家の御内の人々には、天魔がついて、この内薫外護の原理で江間氏一門が正法の家人となることを知って、あなたが法華経を供養することを防ぎとめるために、今回竜象房等の大妄語をつくりだしたのである。ところが、あなたの御信心が深いので、十羅刹女があなたを護ろうとして、主君の病気をおこしたのであろうか。主君はあなたを自分のかたきとは思われていないけれども、ひとたび彼らのいうことを用いたことによって、御病気が重くなり、長引いておられるのでしょうか。
講義
「大妄語」「讒言」に断じて負けるな
魔の軍勢は、必ず「妄語」を造り出す。捏造や讒言で人を陥れるのが、魔の常套手段であるとの御文です。
「人を殺して血もみせない武器がある。それはデマを製造することだ。」
中国の文豪、魯迅の言葉です。根も葉もないデマを撒き散らす。それが魔の本質にほかなりません。
あの竜の口の法難にも「無尽の讒言」によるものでした。
讒言とは、事実を曲げて人を中傷することです。そして魔は、常にその讒言を用いて、権力者を使って、正義の人を追い落とそうとする。まさに化他自在天の魔性の働きです。三類の強敵の中で一番恐ろしい僭聖増上慢も、常に、嘘で塗り固めた情報を駆使して権力者を動かし、法華経の行者を迫害しようとする。俗衆増上慢や道門増上慢と異なり、自分は決して表に出てこない。自分が直接手をくださない。それが第六天の魔王の正体です。
大聖人は、この原点に照らして、今回の四条金吾を取り巻く背景に、この魔性がうごめいていることを喝破されています。すなわち、江間家の人々に天魔がついて、四条金吾を迫害するために、大嘘を作り出したのだと仰せです。
魔は知らずのうちに、私たちの心を破壊しようと働きます。したがって、魔の正体を見破る智慧があれば、魔の力は半減します。そして最後に魔を破るのは勇気です。即、信心の力です。
内薫外護の原理に照らせば、四条金吾の内薫、すなわち信心の力が強盛だったので、十羅刹女が動き、主君の病気が起きたのであろうかと仰せです。事実、このことを契機に、金吾の状況が打開されていくことは先に述べた通りです。
諸天善神の働きがいかなる形で出てくるかは、状況によって千差万別です。今回の事件でいえば、主君の江間氏もまた、一時は魔にたぶらかされたので、江間氏の病気という形で現われた。しかし結果として、江間氏自身にとっても、再び金吾を用いるようになるわけですから、本抄の冒頭に述べた原理のまま、法華経の功力に包まれていくことは間違いありません。そのこと自体、明確に江間氏自身の福徳の果報であるといえましょう。
しかし江間氏の場合と違って、いわば魔を起こさせる元凶には、明快に現罰が起こることが次に示されています。