慈覚大師事 第一章(法華経に出あえた悦びを述べる)

 鵝眼三貫、絹の袈裟一帖、給び了わんぬ。
 法門のことは、秋元太郎兵衛尉殿の御返事に少々注して候。御覧あるべく候。
 なによりも、受け難き人身、値い難き仏法に値って候に、五尺の身に一尺の面あり、その面の中に一寸の眼二つあり。一歳より六十に及んで多くの物を見る中に、悦ばしきことは「法華は最も第一なり」の経文なり。

 

現代語訳

銭三貫文および絹の袈裟一帖をいただいた。法門のことは秋元太郎兵衛尉殿の御返事に少々記しておいた。御覧いただきたい。

なによりも受けるのが難しい人身を受け、あうのが難しい仏法にあった。五尺の身に一尺の顔がある。その顔のなかに三寸の眼が二つある。一歳から六十歳に及んで多くの物を見るなかで、悦ばしいことは法華最第一の経文である。

 

語句の解説

秋元太郎兵衛尉

日蓮大聖人御在世当時の門下。下総因幡郡白井庄(千葉市若葉区)の人。文応元年(1260)大聖人が松葉ケ谷法難を逃れて下総中山に行かれた時、化導されたと伝えられる。正応4年(1291917日没。跡地は秋元寺となった。曾谷・太田・富木氏等と親交があった模様。

 

人身

人間の身体。

 

仏法

①仏の説いた教法。八万四千の法門・法蔵があるといわれる。②仏が証得した法③仏が知っている法。

 

五尺の身

昔の日本人の平均的身長をいう。五尺は152㌢にあたる。

 

一尺の面

日本人の平均的顔の長さ。30.3㌢にあたる。

 

三寸の眼

日本人の眼の長さ。3.03㌢にあたる。長すぎる感もあるが、一寸(1.01㌢)とする文献(こちらは短すぎる)もある。

 

法華最第一の経文

釈尊が説いてきたところのさまざまな経の中で法華経が第一であるということ。法華経を説くことこそ、仏の出世の本懐であるという宣言。

 

講義

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