本尊問答抄(第十一段第五 真言の邪法こそ亡国の因)

本尊問答抄(第十一段第五 真言の邪法こそ亡国の因)

 弘安元年(ʼ78)9月 57歳 浄顕房

———————————–(第十一段第四から続く)——————————————

然而日蓮小智を以て勘えたるに其の故あり所謂彼の真言の邪法の故なり僻事は一人なれども万国のわづらひなり一人として行ずとも一国二国やぶれぬべし況や三百余人をや国主とともに法華経の大怨敵となりぬいかでかほろびざらん、

 ——————————–(第十二段第一に続く)———————————————

 

現代語訳

しかしながら、日蓮が少々の智恵をもって考えてみると、朝廷側が敗れたのには理由がある。いわゆる真言の邪法に依るのである。

道理に合わない誤ったことは、たとえ一人が行ったとしても万国の災いとなり、ただ一人行じたとしても、一国や二国は滅びるのである。まして三百人あまりの僧が国主とともに、法華経の大怨敵となってしまったのだから、どうして国が滅びないことがあろうか。

講義

ここより、真言師による密教の祈禱こそ亡国の因であることが明かされていく。

すなわち、承久の乱において朝廷方が、一国の国主であるにもかかわらず、臣下である鎌倉幕府と争って、何故に大敗を喫したかについて、真言の邪法によって祈禱したところに原因があると断じられている。誤った法によっていくら祈禱を重ねようとも、その祈りがかなうことは絶対にないのであり、それどころか、かえって自らが滅びる因となってしまうことを示されている。

そして更に、たとえ一人であっても邪法を行じれば万国の災難を招き、また、たった一人でも謗法の悪行を行じれば一国・二国がほろびるのであるから、まして、承久の乱では、国主の命により300余人の高僧たちによって大々的に密教の修法が行われたのであるから、滅びない訳がないと仰せられている。

これは、大聖人が、民に負けるはずのない国主が敗れ、秘法の限りを尽くした朝廷側が何もしなかった幕府側に大敗したという事実を取り上げて、真言の邪法が亡国の悪法である現証であると指摘されたものである。そして、このことを見抜かれたのは大聖人ただお一人であることを秋元御書にも「世間の人人・此の根源を知る事なし此れ偏に法華経・大日経の勝劣に迷える故なり」(1076:13)と述べられている。

そして、大聖人は、その原理に照らして、今度は鎌倉幕府が同じ轍を踏もうとしていることを憂えられ新たな亡国の危機に警告されているのである。それが「かかる大悪法としをこへて」以下の御文である。

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