光日上人御返事 第二章(弘安の役と予言的中)

光日上人御返事 第二章(弘安の役と予言的中)

 弘安4年(ʼ81)8月8日 60歳 光日尼

 今日本国の四十五億八万九千六百五十八人の人人は皆此の地獄へ堕ちさせ給うべし、されども一人として堕つべしとはおぼさず、例せば此の弘安四年五月以前には日本の上下万人一人も蒙古の責めにあふべしともおぼさざりしを日本国に只日蓮一人計りかかる事・此の国に出来すべしとしる、其の時日本国の四十五億八万九千六百五十八人の一切衆生・一人もなく他国に責められさせ給いて、其の大苦は譬へばほうろくと申す釜に水を入れてざつこと申す小魚をあまた入れて枯れたるしば木をたかむが如くなるべしと申せば、あらおそろし・いまいまし・打ちはれ所を追へ流せ殺せ信ぜん人人をば田はたを・とれ財を奪へ所領をめせと申せしかども、此の五月よりは大蒙古の責めに値いてあきれ迷ふ程にさもやと思う人人もあるやらん、にがにがしうして・せめたくはなけれども有る事なればあたりたり・あたりたり、日蓮が申せし事はあたりたり・ばけ物のもの申す様にこそ候めれ。

 

現代語訳

今、日本国の四百五十八万九千六百五十八人の人々は皆この地獄に堕ちるであろう。ところが誰一人として地獄へ堕ちるとは思ってはいないのである。たとえばこの弘安四年五月以前には日本の上下万人が一人も蒙古の責めに値うとは思っていなかったのを、日本のなかでただ日蓮一人だけが、蒙古の来襲がこの日本に起こると予知していたのである。そのときに日本国の四百五十八万九千六百五十八人の一切衆生は一人も残さず、他国に責めたてられて、その大苦は、譬えていえば焙烙という釜に水を入れ雑魚という小魚を沢山入れて、それを枯れた柴木で煮焚くようになるといったところ「日蓮は実に恐ろしい。実に忌々しい。彼を打て、所を追い出せ、島流しにせよ、殺してしまえ、彼を信ずる者の田畑を取り上げよ、財産を奪え、所領を没収せよ」といっていたが、この五月からは大蒙古の責めに値い予言の的中にあきれ迷うようになったので、なかには「ほんとうにその通りなのかも知れない」と思う人々もあるだろう。非常に不愉快なことであるから、いいたくはないが、事実なので予言はあたったのである。日蓮が日ごろからいっていたことがあたったのである。だがいままで反対してきた謗法の者は、日蓮のいうことを化け物がいっているかのように思っているであろう。

 

語句の解説

四十五億八万九千六百五十八人

当時日本全国の男女の総人口数。当時の億はいまの10万の位に当たる。したがって、4,589,858人となる。大聖人のもちいられたものは、8世紀の統計によると思われる。

 

ほうろく

平たい素焼きの鍋。食品、薬品などを炒めるが、主にゴマ・マメ類、麦米を炒めるのに使用した。炒鍋、早鍋ともいう。

 

此の五月よりは大蒙古の

弘安4年(12815月の蒙古襲来をさす。文永の役についで、日蓮大聖人の予言どおり弘安4年(12815月の第二回蒙古襲来は、モンゴル、漢、高麗合同の東路軍約42,000人、軍船900隻と旧南宋の江南軍100,000人、軍船3,500隻の二軍団の大軍であった。521日対馬、26日には壱岐を侵し、6月には九州・博多へと迫った。各軍一か所に集結し、大挙大宰府攻撃を企てたが、閏71日夜大風雨にあって大半が壊滅した。

 

講義

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