持妙尼御前御返事 第一章

持妙尼御前御返事 第一章(僧膳料供養に対する感謝を述べる)

 建治2年(ʼ76)11月2日 55歳 窪尼

 御そうぜんりょう、送り給び候い了わんぬ。

 

現代語訳

御僧饍料をお送りいただきました。

語句の解説

そうぜんれう

僧侶に差し出す食膳の材料になるもの。米、野菜などのこと。

講義

本抄は御真筆は現存しないが、日興上人の写本が大石寺に所蔵されており、そのあて名は「持妙尼御前御返事」と記されている。持妙尼とは日興上人の叔母にあたる富士郡賀島(静岡県富士市)の高橋六郎兵衛入道の後家尼のことである。高橋六郎兵衛入道は建治元年(1275)に亡くなったものと考えられるので、この112日の御消息は建治2年(1276)の御述作と推定される。

本抄の内容は、夫に死別した妙心尼(持妙尼)の悲しみを種々の故事を挙げて慰められ、これまでこの娑婆世界で無数の生死を繰り返してきた尼御前にとって、亡き夫こそ娑婆世界最後の善知識であると述べられて、尼御前が必ず成仏を遂げるよう励まされている。

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